サイバーセキュリティの重要性が叫ばれる現代、パスワード管理やウイルス対策ソフトの導入に力を入れている中小企業も多いことでしょう。しかし、デジタルだけではなく、物理的なセキュリティ対策も見逃してはいけません。オフィスや店舗で発生する物理的なリスクが業務に大きな影響を与えることがあります。本コラムでは、中小企業に必要な物理的セキュリティ対策について、具体的な事例を交えながら解説します。
目次
物理的セキュリティとは何か?
物理的セキュリティとは、建物やオフィス、機器などを物理的に守るための対策のことです。具体的には、盗難や不正侵入、災害対策など、サイバー空間以外のリスクから企業の資産を守る手段です。デジタルデータが増えている現代でも、紙の書類やパソコン、サーバー機器など、実際に触れる物理的な資産が存在します。これらが守られていないと、いくらサイバーセキュリティが万全でも情報漏洩や業務停止のリスクが残ります。サーバーにあるデータをサイバー攻撃から守ることに必死になっていても、サーバーそのものを盗まれてしまったら、結論としてはデータを失うことと等しくなります。物理的セキュリティは意外と重要な要素です。
中小企業が直面する物理的リスクの例
中小企業が物理的セキュリティを怠ることで直面するリスクにはどのようなものがあるのでしょうか?以下に代表的な例を挙げます。
- オフィスや店舗への不正侵入
夜間や無人の時間帯に侵入され、金品や重要な書類が盗まれるケース。 - 機器の盗難
ノートパソコンやスマートフォンが盗まれ、顧客情報や業務データが漏洩する可能性。 - 災害による被害
火災や地震によって、パソコンやサーバーが損壊し、データが失われる危険性。 - 内部犯行
従業員や関係者が意図的に機密情報を持ち出すケース。
これらのリスクはデジタルセキュリティ対策だけでは防げません。物理的な対策が必要不可欠です。
中小企業における物理的セキュリティ対策の基本
では、具体的にどのような物理的セキュリティ対策が必要なのでしょうか?中小企業にとって実践しやすい基本的な対策を以下にまとめました。
- アクセス制限
オフィス内の重要なエリアにはアクセスカードや暗証番号を用いたセキュリティゲートを設置することで、外部の人間や未許可の従業員が立ち入るのを防ぎます。 - 防犯カメラの設置
オフィスの入口や倉庫に防犯カメラを設置し、24時間体制で監視することで不審者の侵入を抑止します。 - パソコンの固定
ノートパソコンなどの持ち運び可能な機器には、ケーブルロックを利用してデスクに固定し、盗難を防ぎます。 - 書類やデータの保管
紙の書類やUSBメモリなどのデータは、鍵付きのキャビネットに保管し、無断で持ち出されないようにします。出来ることならばUSBやDVD-Rなどの物理的メディアに保存しない仕組みづくり、ルールづくりが重要です。
物理的セキュリティの強化で得られるメリット
物理的セキュリティを強化することで、中小企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
- リスク軽減と安心感の向上
物理的なリスクに対する対策を講じることで、企業の資産が守られ、従業員や経営者に安心感が生まれます。 - コンプライアンス対応
業界によっては、物理的なセキュリティ対策が法律で義務付けられている場合があります。これに準拠することで、罰則や信頼の低下を防げます。 - ビジネスの継続性の確保
災害や盗難が発生した場合でも、事前に対策をしておくことで業務を迅速に再開でき、ビジネスの継続性を確保できます。
物理的セキュリティ対策の進め方とコストについて
中小企業が物理的セキュリティ対策を進める際、どのように進めるべきか、またどれくらいのコストがかかるのかについて解説します。
- まずはリスクの洗い出し
自社のオフィスや店舗のどこにリスクがあるのか、従業員と一緒にリスクアセスメントを行い、具体的な対策が必要なエリアを特定します。 - 費用対効果の高い対策から始める
防犯カメラの設置やアクセス制限など、比較的低コストで効果の高い対策から導入し、徐々にセキュリティレベルを上げていく方法が有効です。 - 外部専門家の活用
より高度な対策が必要な場合には、セキュリティ専門業者に相談し、コンサルティングを受けることで、効率的に対策を進めることができます。
これだけは避けるべき物理的な情報セキュリティはコレ!
情報セキュリティは昨今注目度が高いテーマですが、サイバー空間での対策が注目されています。しかし、物理的な面でのセキュリティも入念に対策をとるべきです。そこで、弊社がこれまで見てきたお客様先のオフィスにおいて、よくやりがちなリスクが高い物理的セキュリティ面の間違いをご紹介します。ここに挙げられる事例は「絶対に避けた方が良い」という事例ですので、自社内で同じことをやっていないかをご確認ください。
- 杜撰なUSBの管理
USBにデータを入れて移動させなければいけないオフィスは当然あると思いますが、このUSBの管理が杜撰な現場は極めて危険です。USBを紛失すると情報漏洩リスクが高まります。単なる紛失ならまだしも、競合会社へ流れたりダークウェブで売られるなどが発生すると取り返しのつかない事態になります。取扱いルールの設定が重要です。 - パスワードを書いた付箋をモニターに貼る
これも良く見られますが、特に年齢層の高い経営者、従業員さんがやっている場合が多いです。パスワードを知られると端末やシステムを使うことができます。多くの場合、こういったことをする方は、パスワードを使い回しているので、1つインシデントが発生すると芋づる式で様々なインシデントが連発するリスクがあります。 - 離席時のパソコン画面がそのまま
社内に来客者がいた場合、あるいは出入りの業者がいた場合は、パソコンを勝手に操作することができます。表示されている情報を盗み見ることもできます。離席する時はスリープ状態にして、パスワードを入れないと開けないようにしましょう。 - 社外でパソコン作業中に画面が後ろから見える
出張先などでパソコンを開く場合に周囲を気にせずにいると、画面に表示されている情報を盗み見されるリスクが発生します。特に重要情報は人がいない場所で開く方が良いでしょう。また、パソコン画面にのぞき見防止フィルターを付けて第三者に見られるリスクを低減させることも有効です。 - ノートパソコンを社外で紛失
これは最悪な事態です。ノートパソコンは大事な情報が入っているので紛失はもってのほかです。お酒が入る席、荷物を手放す場では特に注意が必要です。 - 印刷した紙をプリンターに放置
印刷した紙には重要情報が記されている場合があります。印刷して忘れたままにすることで個人情報や重要情報を他の人に見られるリスクが発生します。印刷したら確実に回収しましょう。
まとめ
サイバー空間でのセキュリティはもちろん大切ですが、物理的なセキュリティも同様に重要です。デジタルと物理の両面からリスクに備えることで、中小企業の資産やビジネスの継続性をしっかり守ることができます。まずは身近なところから物理的セキュリティ対策を進めてみてください。